財務情報サプライチェーンの効用
金融の機能を人間の身体になぞらえて、身体の各器官に栄養分や酸素を送り届ける「血液」と同じであるというのは、よく聞く喩え話です。
それでは、金融業における「血液」の役割とは何でしょうか。金融業はお金の仲介を行う産業であり、金融業における「血液」の役割とは、お金にまつわる「情報」を伝達することと定義できます。お金にまつわる情報についてもう少し詳しく見ると、(1)「お金のやりとりに関する情報(金融取引情報)」と(2)「お金の所有者や利用者(出し手や借り手)に関する情報(財務情報やリスク管理情報などの意思決定に必要な情報)」に分けることができます。
金融業の歴史は、この2大情報を効率的に制御・管理することの歴史であったといっても過言ではありません。情報管理は、まず(1)の金融取引の分野から着手されました。それは、オンライン化等の業務のコンピュータ化であり、大量の取引を効率よく処理し、お金の所有者と利用者を効率よく結びつけることを目的としていました。近年、決済リスク削減のため、金融取引の開始時点から決済まで一元的に処理するSTP(ストレートスルー・プロセッシング)が金融機関のリスク管理にとって重要になってきています。特に直接金融においては一連の取引処理過程を外部(取引所や振替機関等)に依存しいる度合いが高いため、STPが主要な経営課題として認識されています。
STPの概念が導入され、金融取引分野の効率化に一定のゴールが見えてくるようになって、新たに意識されるようになったのが、財務情報やリスク管理情報等の意思決定に必要な(2)の情報の効率化です。インターネットの普及によって社会変動の波が短期化し、従来までの紙ベースの情報では、意思決定を効率化しようにも限界があることが認識されたからです。意思決定の分野は、プロセスが定型的な事務処理ではなく、さまざまなデータを集めてアドホックに分析されることが多いためシステム間を固定的につないでしまうのではなく、システム間の情報交換において標準的なデータ交換のプロトコルを決めることがより効率的であると考えることができます。
そこで意思決定に必要な「財務情報」の効率的な管理手段として注目を浴びるようになったのが「XBRL」なのです。